- 2007-04-07 (土) 12:57
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森 健一 氏
東京理科大学
専門職大学院 総合科学技術経営(MOT)研究科教授
1962年 東京大学工学部応用物理学科卒 東京芝浦電気(東芝)入社 同社 総合研究所にて「磁気薄膜メモリー」の研究に携わる 1963年 「文字読み取り研究」に徐々に移行。 同年末、手書き文字に関する特許出願 1967年 郵政省からの委託開発「自動手書き郵便番号読み取り装置」 の開発成功 1970年 特許庁長官賞、大河内記念技術賞受賞 1978年 わが国初のワープロ「JW-10」商品発表 情報システム研究所長を経て 1996年 取締役 パーソナル情報機事業本部長 1999年 東芝テック(株)社長 2004年 東京理科大学MOT大学院 教授 2005年 本田賞受賞 2006年 文化功労者顕彰 |
論語に『学而時習之、不亦説乎』とありますが、私たち人間が持っている学ぶ意欲や創造力は本能的なものに違いない。
新経営研究会は松尾代表の努力によって25年も継続されてきたが、それは同時に、企業に属している多くの人たちの学び続けようとする強い意欲に支えられているからでもある。私は現在、東京理科大学の技術経営大学院に在籍しているが、ここにも社会人学生が300万円の学費を自分で負担して勉強に来ている。社会人学生は企業で仕事をしているうちに問題意識を持ち、それをどのようにして解決したらよいかをじっくりと考えたり、自分の体験を体系化してもっと良い解決策を考え出すために勉強しようと、強い意欲を持ち大学院に来ている。学んだことを企業において実践を繰り返すことで、その人たちはさらに成長していく。学ぶ意欲は誰もが持っており、実際の生活の中で常に活用している。
一方、創造力の方は少し事情が違うように思われる。企業に新人が入社してくるが、その人たちに向かって『この中で創造力に自信がある人は手を上げてください』というと誰も手が上がらない。創造力は本能的に誰もが既に持っている。創造力が無ければ人間生活などできない。しかし、大学までの教育期間の中で、自分がどれほど創造力を持っているのかを体験して実感する機会が無かったために、手を上げられないのが実情である。そこで、入社した新人たちを5-7人のチームに組んで、解決方法が多数ある課題を与えて、他のチームとは異なる解決案を考え出して、その課題を解決する装置を3ヶ月で実現してくださいという課題を与えると、見事に全チームがそれぞれ異なる原理に基づく装置を実現させてしまう。
学ぶ意欲と同様に創造力を誰でもが持っているのに、一方は盛んに活用しているのに、他方は潜在された状態のままになっている。サンフランシスコ州立大学の田中名誉教授の研究によると、日本人は他の民族と同様に創造力を持っているにも拘らず、子供の頃に親から「お前は馬鹿だから・・・」という何気なく言われ続けている中に、実際の受験に失敗したり、努力したことが十分に実現しないことがあると、「やはり自分は馬鹿なんだ」と自分で決め付けてしまう心理的なトラウマに取り付かれている人が多数いるということである。欧米の教育では「貴方の・・の才能は素晴らしい」と子供の持っている良い才能を誉めて伸ばすことを重点に行っている。創造力についても同様である。田中教授が大阪大学で行ったカウンセリング実験で、創造力に自信が無いという大学院生に面接して、その人が子供のときに受けている心理的なトラウマを排除する治療を行うと、その人が持っている潜在的な創造力が見事に開花することが実証されたそうである。
社会人学生が学んでいる技術経営大学院でも、異分野の企業から来た社会人学生同士が活発に議論をすることにより、自分の経験に基づく意見を他人が耳を傾けて聞いてくれ、自分の考えに他人が批判や意見を述べてくれることにより、自分の考えがさらに深まることを体験する。このプロセスにより学生たちが自信を取り戻し、2年度目に研究・制作するMOTペーパーが完成するときには、その人の創造力や才能が開花していることを実際に数多く見ている。大学院で2年間、毎日顔を合わせて切磋琢磨することが重要なことのようである。企業の中では社員がお互いに競争関係にあり、切磋琢磨するような環境とは少し違うようである。日本人はもっと誰もが持っている豊かな創造力を大切にすべきである。
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