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新たな価値創造 超高解像度TV・Cell REGZAの開発、日本のものづくりの復権を目指して — 東芝 田辺俊行 氏 

と き : 2010年10月27日(水)
会 場: 東京理科大学 森戸記念館
ご講演 : (株)東芝 ビジュアルプロダクツ社 理事   田辺俊行  氏 

 

 「イノベーションフォーラム21」の2010年度後期 第2回目は、東芝ビジュアルプロダクツ社 理事である田辺俊行さんの「新しい価値創造 超高解像度TV・CellREGZAの開発、日本のものづくりの復権を目指して」と題するお話であった。いま日本のテレビは、世界市場においては韓国のサムスン、LG2社に大きなシェアを奪われて苦戦しているが、東芝は高画質のテレビで人気を高めて、日本メーカーの中ではシェアを着実に高めてきている。やはり品質、性能で勝負するのが日本企業だが、テレビでそれが可能であるのか、大いに注目される。
  まず、組織と開発体制についてのお話があったが、映像事業部を二つに分けて、第1事業部は先進国対象、第2は発展途上国対象としているのが注目点であった。確かにこの二つは市場の性質がかなり異なっていて、日本は市場の伸びが大きい発展途上国向けで遅れを取っているのであり、分けて事業を進めるのはいまの時代には必要なのだろう。開発体制では、icubeという表現で、開発、生産、営業の三つが一体になって進めていく点を強調された。
 2000年代の初めから、大画面の液晶テレビ、プラズマテレビがいよいよ普及していく時代に入ったが、東芝は液晶テレビでは、日本企業の中でも出遅れが大きかったという。そこで、高画質化による巻き返しに全力を投入することを決めた。それをREGZAと命名して、さらに超高性能半導体であるCellを採用して、CELL REGUZAとして抜きん出た高画質化を目指した。それによって、国内シェアでは、2000年の7%から急速に高めて、25%まで上げることができた。やはりテレビも、品質、性能が大きな武器になるのだ。
  その高画質化の原動力になったのが、絵づくりの匠である。東芝には、入社以来ひたすらテレビの絵づくりをしてきた専門技術者が3人いて、無限大の数になるあらゆる絵柄において、最高の画質が実現できるように工夫し、そのデータベースをどこまでも蓄積していく。そのたゆまぬ努力が、高画質を実現させる。しかもそれは、蓄積を着実に深めることによって年と共に進化していくのだ。高画質化の目標は、デジタルツールを用いて、いかにアナログの表現に近づけるかであり、それを実現するのが匠の技である。
 この蓄積と匠が、韓国に対抗していく有力な手段になるのだが、それが最先端分野における新製品の創造に活かせるというのが、大きな発見であった。蓄積と言えば、創造とはあまり関係がないと思われがちであるが、そうではなく、蓄積による創造を目指すのが、蓄積の賜物である匠が育つ風土がある日本の進むべき道の一つである。
  田辺さんは、脱コモデティ化も強調された。これは日本企業にとって世界市場で伸びていくための最も重要な課題であるのだが、ただし、いわゆるボリュームゾーンを狙うべきとする方向もあって、それが絶対であるか一概にはいえない。コモデティといえば、日用品のように安価になることのように取られるが、田辺さんが言う脱コモデティは、安価ではない良い高い製品を狙うと言うのではなく、誰でも作れるのがコモデティであって、他社では作れないものにするのが、脱コモデティと言うのである。これは、大いに注目すべき方向であり、安く作る努力は大いにすべきなのだ。テレビでは当然であり、他社ではできない高画質化を実現して、価格競争力は充分に保つのである。
  東芝のテレビのパンフレットを見ると、エンジンと言う言葉をひんぱんに見かけるが、田辺さんもエンジンにしばしば言及した。テレビでエンジンとは何か。半導体×ソフトウェアであって、テレビの中核になるものだ。エンジンを核としたビジネスモデルを構築していくが、重要なのはソフトウェア開発力と、絵づくり技術などの蓄積であるという。
  テレビは、かつてはブラウン管、いまは液晶、プラズマのパネルが核であると思っていたのだが、そうではないようだ。エンジンが核になるのであれば、半導体とソフトは進展を続けるので、テレビはこれからも大きく発展していく。日本企業は、ここで再び世界をリードしていくことが可能である。
  最後に3Dの話をされたが、東芝はグラスレス3Dの開発に大きな力を注いでいる。これも、エンジンが非常に高度になって可能になる。その実現はかなり先になるようだが、やはりテレビはこれからも発展していく製品であると、思いを新たにした。
  なお、会場で3Dも写すCELL REGZAを見せていただいた。確かに素晴らしい画面であり、大半の人が欲しいと強く思うだろう。かなり高価であるが、なんとか安くして広げて欲しいものである。                     (文責 森谷正規)

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