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古代日本の超技術、あっと驚くご先祖様の智慧  静岡理工科大学 志村史夫氏

《と   き》 2013年7月19日 
《講  師 》 静岡理工科大学 教授 志村史夫氏
《コーディネーター》 放送大学 名誉教授 森谷正規氏

 2013年度第4回例会は、静岡理工科大学 教授をされている志村史夫氏をお囲みした。

 志村史夫さんは、異色の研究者である。半導体の結晶に関して、米国でまとめられた半導体技術発展の歴史の中で紹介されるほどの偉大な成果を、米国で上げられた。帰国してからは数々の古代の技術に関する調査研究に熱中して、ベストセラーになる本を書いている。さらに、「男はつらいよ」の寅さんの熱烈なファンであり本まで書いていて、この名作映画を振り返るNHKの特別番組に依頼されて出演するという、また違った局面もある。
 この三つに共通するのは、面白いと思ったものは何であれ、全力を挙げて打ち込むことである。このお話では、寅さんは出て来ないけれども、最先端の半導体と古代の技術が見事に結び付けられていて、志村さんでなければ聞けないお話であった。
 まずは、日本の伝統的な職人の素晴らしさを示す。能力としては、研ぎ澄まされた感性を持っていて、豊富な知恵の塊であり、その姿勢においては自信と誇りを持ち、責任感があって、しかも謙虚であり、さらに、凛としていることを強調された。
そこで、古代の技術として話されたのは、五重塔、たたら製鉄、木工、瓦の四つである。
まずは五重塔だが、三重から九重まで含めると、日本には塔は500以上もあって、それが、千数百年の歴史の中で40回以上もの超大地震が生じたにもかかわらず、倒れたものは一つも無いという。この巨大な建造物は、最大では96メートルの塔があったというが、クレーンが無い時代に、いったいどうして建てたのか。さまざまな知恵を駆使したに違いない。
 その塔の中心に心柱があって、それが、制振装置として働いて、地震に耐えたのである。心柱は東京スカイツリーにも採用されていて、今では有名になっているが、古代の不思議とも言える技術である。
 この巨大な柱は、初期には地面に接していたが、時代を経て、宙づりになった。この心柱という仕組みをいったい誰がどのようにして思いついたのか、私は不思議に思っていて、質疑の時間にお伺いした。それは、まったく分からないというお答えであった。
 私の思いつきに過ぎないのだが、経験から生まれるとしたら、巨大地震は滅多にないが、台風は年に何度も来るのであり、台風による揺れを減らすのに心柱が効果があると気づいたかもしれないと、その考えを申し上げた。しかし、それを知りようはなく、謎としておくしかないようだ。
 木工に関しては、鋸と鉋がない時代の加工の巧みさに驚く。巨大な樹木を、手斧と槍鉋で、柱や板に加工するのである。切り倒した木材を、まず打ち割り法で割っていく。それで、かなり精密に割ることができるようだ。
 そこで、半導体が登場してくる。シリコンウェハーを今以上に極めて薄く切るのに、結晶面に沿って割っていくと言う方法が考えられ、それが合理的で、その方が性能の面では優れているはずだという。これは、槍鉋での加工にも言えて、台鉋で削った板に比べて、表面の水をはじく能力が良くて、染み込みが少ないという。木が持つ本来の構造を強引に壊してないからである。
 材料を、高度な装置で強引に加工するのではなく、材料の基本的な構成を活かして加工するのが理にかなっていると思わせる。特に木材に関しては、古代からの寺社の建築技術において、それを気づかせるものが多い。
 なお、手斧も槍鉋も、古代のものは現存してなくて、法隆寺、薬師寺などの古代の柱の削り跡を基にして再現している。法隆寺の棟梁である西岡常一さんの依頼で、土佐の野鍛冶である白鷹幸伯が創ったのだ。
鉄は、錆の話から始まった。鉄は風雨に晒されるとすぐ錆びてボロボロになるが、それは赤錆であって、黒錆が生じると、内部には浸透せず、むしろ保護してくれる。したがって、法隆寺、薬師寺の釘が、千数百年後にも残っているのである。なお、法隆寺再建の用いた古代の釘も、白鷹さんが創った。
 なぜ千数百年も持つのか、それに関連するのがたたら製鉄の炉の仕組みにあり、それを詳しく話された。しかもそれが半導体に結び付く。たたらの鉄は、純度が非常に高い。シリコンウエハーも、イレブンナインの純度が要求される。その共通点が、ゾーンメルティングであるという。部分的に溶かしながら、不純物を減らしていくのである。古代の人は、ゾーンメルティングという原理は知らなくても、経験と知恵でそれを実現していたのである。
 古代の釘は、純度が非常に高いから錆びないのである。現代の釘は、生産性と加工性を上げるために、さまざまな金属を混ぜている。白鷹さんにも十数年前にこの会でお話をお伺いしたが、鉄は、時代と共にある面では劣化していったという強烈な印象を受けた。なお、志村さんは白鷹さんとも親しく、高知まで行って、釘づくりを体験している。
 鉄は非常に面白い材料であると志村さんはいう。一般には古くて新しみのない材料と見られているが、まだまだ新しい可能性が開けるのではないかと思わせる。
 最後が瓦であるが、その素晴らしさは、非常に長い年月にわたって家を守ることと、生活の面では雨を漏らさず湿気を抜いてくれることであるという。日本の瓦は、その二つにおいて非常に優れている。人間国宝の瓦職人と志村さんは共同で、長い間、瓦の研究を続けてきている。その優れた性能をいろいろと話されたが、これも加工法において、半導体と結び付く。
 それは、原料にする練った粘土の塊を切るのに、ワイヤを用いることである。古代から現代の最先端技術と同じ加工法を用いていたのだ。ワイヤを用いることによって、切り屑を最小にして、大きなものを速やかに切ることができる。古代も最先端も、人間の知恵の働かせようは同じである。
 ところが、現代の瓦は、古代のような素晴らしい性能を持っていない。それは、30-40年も経つと建て替えるのがいまの住宅であり、それを求めないからである。
 これが、考えさせられる重大な問題で

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