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日本の文化的特質とハイテクが融合して生まれたグローバルヒット商品

と き :2010年1月19日
会 場 :東京理科大学 森戸記念館
ご講演 :任天堂(株) アドバイザー 上村 雅之氏
コーディネーター:放送大学 客員教授 森谷正規氏

  「21世紀フォーラム」2009(後期)の第5回は、任天堂株式会社アドバイザーであり、立命館大学大学院教授の上村雅之さんの「ビデオゲームと日本人の遊び、日本人の遊戯観」というお話であった。上村さんは、ゲーム機の新しい時代を開いた「ファミコン」の開発者であり、その後も「スーパーファミコン」など数多くの大ヒット商品を出した任天堂の開発リーダーであった。
 上村さんには、21年前に「ファミコン」の開発についてのお話をいただいたが、いまも多くの事柄を鮮明に記憶しているたいへん優れた内容であった。多くの情報家電、情報機器において、日本が断然強かった国際競争力を失っているのが現状であるが、ゲーム機はいまも日本がリードしている。その根底には、日本人の遊戯観があるものと思われる。これから多くの製品に遊び心が必要とされるのであり、上村さんのお話への期待は大きい。
 そのお話は、ゲーム機の歴史から始まった。まずは1978から79年にかけて大ヒットした「スペースインベーダー」である。喫茶店に設置されて、若者中心に一大ブームになったのだが、その成功要因をいくつか挙げられた。一人で遊ぶことができる、攻撃してきてそれに対応できる、1回が100円と安い、簡単であり、同じ条件で繰り返して、次第に上達するなどだ。そして、パチンコと違って景品が無いのだが、それはいわば無償の恋であるという。若者の遊びの価値観にぴったりであったのだ。
  このゲーム機を大きく進歩させたのが、マイコンの急速な進展である。高度な情報処理ができるようになって、遊びを創り出せるようになった。開発者は、ソフトウェアを通して、自ら遊びながら調整することができる。難しすぎず、易しすぎず、面白さが続くように繰り返し調整するのだ。それは、プログラマーの遊戯感性に基づくものであるという。この言葉を上村さんは強調したが、優れた遊戯感性を持ったプログラマーがいて、良いゲームができるのである。日本人は、その面で優れていると言えるのだろう。
  「パックマン」についてのお話もあったが、これは一種の鬼ごっこであり、いまも鬼ごっこは子供たちの人気の遊びのようだ。「ファミコン」でゲーム機はさらに一段と進んだ。それは、長い時間を使う遊びが可能になったことだ。そして、喫茶店、ゲームセンターで遊ぶばかりではなく、ゲーム機が家庭へ入っていった。「ファミコン」のビジネスとしての大成功は、グラフで示されたが、100万台普及する期間がどんどん短くなるのである。それは、優れたソフトの出現によるものであった。当初は任天堂がソフトを開発していたが、優秀なソフトメーカーが次々に現れたのである。遊戯感性に優れた若者が数多く生まれたのだ。
  日本人の遊戯観についてもいろいろと話されたが、「梁塵秘抄」の有名な言葉である「遊びをせんとや生まれけむ、遊ぶ子供の声きけば、我が身こそさえ動がるれ」を引用されて、日本人が古来持っている遊び心に気づかされた。遊びと言えば子供であるが、子供の心を大事にしてきたのが日本である。
  いま日本は、情報家電、情報機器において、韓国、台湾、中国にタジタジになっているが、ゲーム機で日本が強いのはなぜなのか、韓国ではゲーム機はどうなのかと、私は質問したのだが、その事情を説明されて、議論していて、日本人の特性ではないかと気づいたことがあった。私は、「日本人は、多くの人々を楽しませるのがよろこびではないか」と言ったのだが、上村さんは納得されたようであった。これは、日本の多くの製品において実現させて、日本の強みにすることができるはずである。

森谷正規

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