- 2007-08-09 (木) 12:51
- イノベーションフォーラム21
と き:2007年8月2日
ご講演:シャープ(株)代表取締役専務 太田賢司氏
コーディネーター:LCA大学院大学 副学長 森谷正規氏
21世紀フォーラムの第5回は、シャープ株式会社代表取締役専務である太田賢司さんの「21世紀企業と環境経営」と題するご講演であった。
シャープは今、最も注目を集めている企業である。薄型大画面テレビがいよいよ世界で巨大マーケットに発展しているが、シャープは液晶テレビの実用化に向けて、他社よりも断然早く力を注いで来て、液晶テレビでは、現在、国内で断トツのシェアを握っている。
三重県にある最新鋭の亀山工場に積極的な投資を進めており、これは最も注目されている工場である。その亀山工場に5000kwの大型の太陽光発電設備を設置していて、規模においては日本一であり、蓄電のための超伝導システムも導入していて、地球温暖化を防ぐ環境配慮の非常に進んだ工場になっている。
その環境保全を目指す経営を企業全体として志向している、というのが今回のお話である。
前半は先ずシャープの経営全般について話をされたが、中でも研究開発についての三つの制度が関心を引いた。
第一は、緊急開発プロジェクトである。「緊プロ」と略されてよく知られているが、重要性の最も大きい開発課題を社長直轄で全社を挙げて進める制度であり、1977年に開始されて、今も実施していて大きな成果を挙げている。
第二は、シャープ・ドリーム・テクノロジーといわれる、3〜5年先を目指した革新的な技術へ挑戦するもので、いわゆる「魔の川」、「死の谷」、「ダーウィンの海」の障害をいかに克服するかに力を注いでいるという。
第三は社会連携で、社会に広く研究開発の可能性を求めるのだが、大学の研究者たちとの共同研究に力を注いでいる。東京大学、大阪大学などにシャープ・ラボを設けて、研究者を派遣して本格的な開発に取り組んでいる。
後半がシャープの環境経営のお話であるが、環境先進企業として、環境問題をマイナスを減らすものとしてとらえるのではなく、利益を求める経営と両立させるのが基本であるという。この環境経営では、環境にかかわる基本的な目標を1)地球温暖化の防止、2)資源枯渇への対策、3)有害化学物質の排除の三つにおいている。中でも中心であるのが温暖化防止であり、企業としての「温暖化負荷ゼロ」を目指している。大画面テレビを生産すれば、当然ながらエネルギーを消費して、それはCO2を排出することになるが、一方で自然エネルギー利用の太陽電池を生産、供給して、それによるCO2の排出減少をもたらして、差し引きゼロにしようというものである。このように企業全体として温暖化負荷ゼロを実現するのは理想的な環境経営である。
この環境経営を目指す方策として、シャープは「スーパーグリーン(SG)戦略」を打ち出している。これは多くの要素からなっていて、企業のあらゆる面で環境に最も好ましいかたちを探っていくものであり、SGT(テクノロジー)、SGP(プロダクト)、SGD(デバイス)、SGF(ファクトリー)、SGR(リサイクル)、SGM(マネジメント)、SGC(コミュニティ)が挙げられた。それぞれにおいて、いかに環境保全に役だっているかを計る尺度を設けていて、90点以上であれば、スーパーグリーンであるとする。それを目指して、各部門が大いに努力をするのである。
SGCは、環境に関して地域での社会貢献活動を行おうというもので、「シャープの森」と称して社員と家族による植樹の活動を各地で行い、また太陽電池などを提供して、小学校での子どもたちへの環境教育をNPOの協力を得て実施している。
このような包括的な全社的な制度を設けて、企業活動のあらゆる面での環境保全への寄与を目指している企業は、まだ数少ない。しかも、尺度を定めて点数までつけるという実践的な活動を行っているのは希少である。このような具体的な制度を設けているのであるから、自社ばかりではなく国内の企業からさらに海外の企業にまで広めていく努力をして欲しいものである。
(森谷正規)
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