世界最先端半導体産業 主役の座の奪回
『2 nm世界最先端半導体量産技術確立で挑む、失われた日本の30年の奪還』
2024年度 後期「イノベーション・フォーラム」第2回例会は、Rapidus(株)取締役会長(前東京エレクトロン(株) 代表取締役 会長 兼 社長 CEO)東哲郎氏より、「 世界最先端半導体産業 主役の座の奪回 / 2 nm 世界最先端半導体の量産技術確立で挑む、失われた30年の奪還」と題してご講演いただきます。
Rapidusは今、“失われた日本の 30年”の奪回で最も期待されている国策企業の一社。この機を逃したら先端半導体分野での日本の復活はない、ラストチャンスと言われ、“Rapidusの挑戦”に今 世界の熱い目が注がれています。
その Rapidus の線幅 2 nm 世界最先端 次世代半導体量産化の開発・生産を担う、北海道千歳市の工場建設が、来年 2025 年 4月の試作ライン稼働を目指し、今、急ピッチで進められています。
そもそもRapidusの誕生は、2022年 8月、IBM社から、「IBMが 15年以上かけて成功させた 線幅 2 nm 次世代ロジック半導体製造に不可欠なGAA(Gate All Around)技術を日本に提供出来る。ついては、その先端ファウンドリーを日本に設立出来ないか」、と打診されたことに始まったのでした。
東 哲朗 氏
この連絡を直接受けたのが今回講師としてお囲みする、後の Rapidus(株)会長、当時 東京エレクトロン(株)会長 兼 社長だった東 哲郎氏だったのです。
早速、このIBM社の意向を関係各位に伝えたところ、当時の日本側の大方の反応は、「日本半導体の復権という点では今が絶好の機会。“次世代半導体”の出現で従来の微細化の方向性が一新されようとしている」。これに、米IBMの Senior Vice President and Director of IBM Research・Dario Gil氏は、「 2nm 世代以降、ロジック半導体の構造は 2次元から3次元になり、製造に原子レベルの制御が必要になって、これまでと全く異なる技術が必要になる」と付言。また自民党 元幹事長 甘利明氏は「チップ間をパッケージ内で 3 次元接続する新技術が求められる。装置/材料技術で強みを持つ日本は、従来と違うステージで半導体分野に復活し、世界を再びリードしていける可能性がある」など、このIBM社の提案に非常に積極的なものでした。
しかし、肝心の日本の主要半導体関連企業の反応は、それぞれの事情もあって、当時、余り積極的ではなかった、と漏れ伺っています。
そこで決意せざるを得なかったのが「新会社の設立」だった、ということです。
このような経過を経て、IBMから提案された最先端 2nm半導体の国産・量産化を目指す新会社 “Rapidus(ラテン語 早いの意)”が創設され、取締役会長に東京エレクトロン代表取締役会長 兼 社長 東哲郎氏、代表取締役社長に 元(株)日立製作所で半導体開発に携わり、元サンディスク(株)代表取締役社長 小池淳義氏が就任。併せてその研究機能を担う半導体研究機関 LSTC(Leading-edge Semiconductor Technology Center)が創設されることになったのでした。
北海道千歳市に建設予定の半導体工場完成イメージ
このRapidus創出への出資企業はソニーグループ、トヨタ自動車、デンソー、キオクシア、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行の8社。資本金73億円。出資額は三菱UFJ銀行3億円以外、各社10億円と同一出資額でした。
また日本政府も半導体復権への出資を惜しまず、2022年度第2次補正予算で「先端半導体の国内生産拠点の確保事業」に 4500億円、次世代半導体の製造を中心とする「次世代ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に4850億円を拠出。加えて2021年度補正予算から、ラピダスにNEDOプロジェクト委託として700億円を拠出。経済産業省の補助金は既に1兆円近くに達しているようです。
今、「AI 時代の幕開け」といわれています。
AIの貢献は、業界を問わず、恐らく予想し難い程大きなものとなるでしょう。しかし、そこで使用される電力もまた大変大きなものになると予想され、その際の必要電力は 2030年までに今日の10倍以上、その大部分はAIによる結果と予想されています。この使用電力の削減が、今緊急の課題です。
「Rapidusが2ナノ線幅の最先端半導体製造に挑む大きな一つの理由は、これからのAI時代における電力削減への対応のためである。この2ナノ以下の線幅半導体なくして今後の使用電力低下は殆ど期待出来ない」、とRapidus 会長 東哲郎氏は指摘しています。
この IBM開発に依るGAAと、日本が半導体で世界トップを走っていた時代を今も体で覚えているエンジニアたちの知見と経験、今日の技術・ノウハウ・経験を再結集して IBM社と連携し、切磋琢磨、諸問題を克服し合っていければ、日本の先端半導体産業への復活も夢ではない。今その絶好のチャンスを迎えている、と私たちも信じています。
今回は日本アイ・ビー・エム(株)様の格別のご支援をいただいて、Rapidus(株)取締役会長 東哲郎氏ご本人から、この挑戦への決意とヴィジョン、具体的挑戦についてご披瀝いただけることとなりました。
Rapidus 社様のこの壮大な挑戦に、心からのエールを送らせていただく次第です。
そしてこの度の集まりは、挑戦者ご本人 Rapidus(株) 取締役会長 東哲郎氏ご本人から、そのご決意とその挑戦について直接ご披瀝いただく掛け替えのない機会であると同時に、皆様に心からのエールを氏に送っていただきたいと願っている集まりでもあります。
又とない、感動的な集まりとなることを確信しています。皆様の積極的なご出席をいただきますよう、心からお願い申し上げてやみません。(⭐︎新経営研究会 代表 松尾 隆)
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