【第1回】 2011年7月26日(火)

旭化成フェロー、旭化成(株)吉野研究室 室長
技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター理事長 吉野 彰 氏

『リチウムイオン電池の基本概念と基本構造の確立、実用化開発へ!!』

 正極にコバルト酸リチウム、負極にポリアセチレンを用いて“リチウムイオン二次電池(LIB)”の原型を創出し、後に炭素材料を負極として今日のLIBの基本概念と基本構造を確立しました。

1986年、LIBのプロトタイプが試験生産され、1991年、LIBは吉野氏の所属する旭化成とソニーによって実用化されました。LIBの開発の歴史は、吉野氏がノーベル化学賞受賞の白川英樹氏発見の導電性高分子ポリアセチレン(PA)が二次電池の負極に適していることを見い出し、その際、正極に不可欠なリチウムイオンを含む材料としてコバルト酸リチウムが使えることを知って生まれたのが、現在のリチウムイオン電池の原型でした。その後、電池容量が上がらず不安定だったPAに替わる負極材料として旭化成の別組織で開発されていた炭素材料が最適であることを見いだして炭素負極を実現し、加えて正極集電体にアルミ箔を用い、更に安全性確保のための機能性セパレータ、安全素子技術、保護回路・充放電技術、電極構造・電池構造などの技術を開発し、安全かつ電圧が金属リチウム二次電池に近い電池の実用化を成功させ、現在のLIBの基本構造を完成させました。

ご講演の骨子

1.開発前夜1980年前後の時代背景
  1-1 日本の産業状況
  1-2 材料業界、電池業界の状況
  1-3 1995年のIT変革の予兆
2.リチウムイオン二次電池の開発経緯
  2-1 基礎研究段階でのブレークポイント
  2-2 開発研究段階でのブレークポイント
  2-3 事業化に向けての喧々諤々の議論  
  2-4 事業化戦略とその結果
3.研究開発・事業化成功の秘訣
  3-1 現在のIT社会を予測して研究をスタートしたか
  3-2 その予兆はどこにあったか
  3-3 技術の詰めの困難さ  
4.リチウムイオン電池 この15年間の軌跡と現在の状況
  4-1 15年間の市場拡大の推移
  4-2 15年間の技術革新の推移
  4-3 現在の状況と課題
5.未来に向けて
  5-1 次の大きな変革の時期とそのITEMは
  5-2 リチウムイオン電池の例から学ぶ未来予測
  5-3 日本の産業の優位な点と欠けている

プロフィール

  • 1970年 京都大学工学部 石油化学科卒
  • 1972年 京都大学工学研究科 修士課程修了
  • 1972年 旭化成(株)(旧旭化成工業)入社
  • 1992年 旭化成(株)イオン二次電池事業推進部商品開発グループ長
  • 1997年 旭化成(株)イオン二次電池事業推進室 室長
  • 2001年 旭化成(株)電池材料事業開発室 室長
  • 2003年 旭化成フェロー
  • 2005年 大阪大学工学部電子工学科博士課程修了
  • 2005年 旭化成(株)吉野研究室 室長
  • 《主な受賞歴》
     化学技術賞、Technical Award of Battery Division
     (米国電気化学会)、市村賞、文部科学大臣発明賞、
     文部科学大臣賞科学技術功労者、紫綬褒章他

【第2回】 2011年8月29日(月)

元ソニー(株) 業務執行役員上席常務 西美緒技術研究所長 西美緒 氏

『リチウムイオン電池の実用化開発、商品化への夢と苦闘』


 1990年の初め、世界で最初にリチウムイオン電池(LIB)を商品化したのはソニー。その開発の中核となったのが西美緒氏。

氏によれば、LIBに行きつく前、ソニーは NiCd 電池の新しいタイプを開発していたが、その軽量化への開発過程で、もし、住友電工に先を越された‘メッキ後の高分子マトリックスを焼き飛ばす’ことに気付いていたら(住友電工開発のセルメット。松下電池や三洋電機はこれを NiCd や NiMH の電極基板として用い、高容量の二次電池を開発)、ソニーも NiCd やNiMH の高性能化の先頭を切り、そのトップメーカーとなっていただろう。しかし、歴史に if はないが、もしそうなっていたら、ソニーは LIB の開発には向かわず、NiMH メーカーとなっただろう、と氏は回想する。二次電池でまったく後発メーカーだったソニーが、盛田会長の指示で86~87年に LIB の開発に着手した。そのソニーが、モルモット精神を発揮し、開発速度を速め、短期間で LIB の開発を成し遂げていくには、どのような施策や努力、ブレークスルーがあったのか。新規材料探査の段階で、どれだけ音響材料開発時代の経験と音楽や蘭の趣味が助けになったか量り知れないという。

ご講演の骨子

1.リチウムイオン二次電池(LIB)登場前夜
  ポータブル電子機器の登場、ファッドからトレンドへ
  高性能二次電池への要求が高まる
2.ニッケルカドミウム電池からニッケル水素電池、
  そしてLIBへ
3.なぜ、ソニーはLIBを選択したか?
  井深大のモルモット精神
4.二次電池で後発だったソニーが如何にして5年間
  という短期間で世界初のリチウムイオン二次電池の商品化に
  成功したか?
5.リチウム電池実現の困難さ
  金属リチウムからリチウム/炭素合金へ 
  新規材料の探索 
  技術的障害の克服 
  先行技術の回避 
  上司、事業部、営業との葛藤 
6.LIBの原理と特徴、用途の拡大
  LIBが二次電池の主流に⇒ ニッケル水素二次電池をすぐに
  追い越した
7.LIBの発展
  性能向上の道筋 
  新しいLIB ⇒ ポリマー電池など 
8.電動車輌とLIB
9.ポストLIBは何か?

プロフィール

  • 1966年 慶応大学 工学部応用化学科卒
          ソニー(株)入社、中央研究所で燃料電池の研究開発に
          従事。その後、音響材料の研究開発を経て
  • 1986年 中央研究所でリチウムイオン2次電池の研究開発に従事
          リチウムイオン2次電池の開発・製造立上げ、世界初の
          商品化に成功。
          リチウムイオン・ポリマー2次電池の商品化にも成功
  • 1997年 ソニー(株)執行役員常務 コーポレート・リサーチ・フェロー
  • 2003年 業務執行役員上席常務
          西研究所所長,マテリアル研究所長、
          CTO (マテリアル担当)
  • 2005年 ソニー(株) 顧問
  • 2006年 同社退社、社友,現在に至る
  • 《主な受賞歴》
      電気化学協会技術賞、Technical Award of Battery
      Division(米Electro-chemical Society)、加藤記念賞、
      農芸化学会技術賞(バクテリア・セルロースの実用化)、
      市村賞

【第3回】 2011年9月28日(水)

日産自動車(株)先端材料研究所エキスパートリーダー
東京大学 生産技術研究所特任教授 堀江英明 氏

『環境車両用高性能リチウムイオン電池の研究開発』


 日産自動車入社後、しばらくは鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池に携わっていたが、1990年にソニーがリチウムイオン電池(LIB)を発表。これを見た堀江氏は、当時自動車メーカーが競って開発を進めていたニッケル水素電池よりLIBの方が性能劣化も少なく

、充放電が安定、しかもエネルギー密度がニッケル水素電池に比べて高く、車への応用性が高いと判断。LIBは必ず自動車の将来を制する時代が来ると確信。1992年、日産はLIB一本に絞り、ソニーとの共同開発を始めた。1996年、日産は世界初のLIB搭載車「プレーリージョイEV」を発表。2003年のモーターショーに出展した電気自動車用モーターと小型LIBがその出力性能で反響を呼び、これを機に自動車企業各社のLIB開発が本格化した。この一連の指揮を執っていたのが堀江氏。氏は、LIBは今後広範な領域でエネルギー供給の中心となる可能性を持ち、今後、様々な環境技術を束ねる‘ハブ’になる可能性を持つという。今回は、高性能蓄電デバイスとして環境車両用高性能LIBの研究開発を振り返ると共に、今後出現して来るであろうリニューワブル・エネルギー利用のための定置用電池の可能性についても触れていただく。

ご講演の骨子

1.二次電池の特性と車両適用における要件
  1-1 二次電池の基本的特性
  1-2 高性能環境車両に求められる要件
2.電気自動車用LIBの研究開発
  2-1 必要とされるエネルギーの見積もり
  2-2 必要とされる出力とは
  2-3 システムの安定性からみた二次電池への要件  
  2-4 熱的設計は不可欠
3.ハイブリッド電気自動車用高出力LIBの研究開発
  3-1 ハイブリッドには出力特性が求められる
  3-2 LIBにおける出力特性の向上
  3-3 熱設計  
4.高容量電池材料の研究開発
  4-1 高容量からみた電池の特性
  4-2 高性能材料の研究開発
5.大型定置用電池は実現するか
  5-1 リニューワブル・エネルギーへの二次電池の利用
  5-2 どのような電池仕様となるか
  5-3 大型定置用二次電池への期待

プロフィール

  • 1985年 東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 理学修士修了
  • 1985年 日産自動車(株) 入社、総合研究所配属
  • 1990年 EV・HEV用高性能電源システムの研究開発に従事
  • 1999年 東京大学 工学博士
  • 2005年 主管研究員
  • 2007年 日産自動車(株)退職、東京大学人工物工学研究センター准教授
  • 2010年 日産自動車(株)再入社、EVエネルギー開発部
          エキスパートリーダー
  • 2010年 東京大学 人工物工学研究センター 客員研究員兼務
  • 2011年 東京大学 生産技術研究所 特任教授兼務
  • 2011年 日産自動車(株)先端材料研究所 エキスパートリーダー
 《主な著書・論文》
  リチウムイオン電池ー基礎と応用(培風館)
  A Study on an Advanced Lithium-ion Battery System for EVs 
  (WEVA journal vol.2)Research and Development Work on High-
  performance Lithium-ion Batteries for EV Application
  (the Society of Automotive Engineering SAE08PFL-257(2008))


会場

東京理科大学 森戸記念館 1階 第2フォーラム
東京都新宿区神楽坂 4 - 2 - 2
Tel. 03 - 5225 - 1033

スケジュール

  • 13:30-14:30  ご講演(前段)
  • 14:30-15:00  ネットワーキング・ブレイクタイム
  • 15:00-16:00  ご講演(後段)
  • 16:00-17:00  Q&A
【コーディネーター】
放送大学 名誉教授 森谷正規氏 
バイエルホールディング(株)シニア技術コンサルタント 松井悦郎氏
 

料金表

   3回ご出席  2回ご出席  1回ご出席
 維持会員  84,000円  63,000円  36,750円
 当会研究会への参加企業  94,500円  73,500円  39,900円
 初めて参加される企業  99,750円  78,750円  42,000円

ご参加をお薦めしたい方々
●トップマネジメント、技術・製品生産技術開発・ものづくり、事業経営、マーケティング、経営戦略、
  マネジメントイノベーション、などの第一線で指導的立場にある方々
●日本で活躍される海外の方々。例えば大使館、海外企業、その他組織に所属される、指導的立場にある方々


お申込み方法

参加申込書(PDFは →こちら)にご記入の上、メールまたはFAXにてお申し込み下さい。

 
申込み先  新経営研究会
  東京都千代田区平河町1-8-2 山京半蔵門パレス501
  TEL:03-3265-4341 FAX:03-3238-1791
  E-mail: office@shinkeiken.com →フォームへ
 
指定振込先 口座名:新経営研究会
  みずほ銀行 麹町支店 普通 1460648
  三菱東京UFJ銀行 大山支店 普通 4688768
  りそな銀行 市ヶ谷支店 普通 1364070

  • 誠に恐縮ですが、銀行振込手数料は貴社でご負担下さいますようお願い申し上げます。
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