第1章

岩野市兵衛氏

越前生漉奉書

生漉奉書 重要無形文化財保持者
九代 岩野市兵衛氏 2007年3月28日


序 浮世絵版画と越前生漉奉書と九代岩野市兵衛氏

(公財)アダチ伝統木版画技術保存財団 理事長 安達以乍牟氏

はじめに

越前和紙の中心産地 越前市(旧今立町)五箇

本当は紙漉き職人でなく、版木の彫師しになりたかった少年時代

安達以乍牟氏

五箇に伝わる紙漉き誕生伝説


漉き紙の種類

奉書

鳥の子

美術小間紙

局紙

書画用紙

麻紙


生漉奉書を漉く九代岩野市兵衛氏(2009年)
生漉奉書四方山 話

300年漉き続けてきた生漉奉書

越前 生漉奉書の特徴

私と越前生漉奉書


生漉奉書の製作

流し漉きと溜漉き

生漉奉書の紙漉き手順

 ①皮むき

安達以乍牟氏が持参された浮世絵版画 歌麿

 ②煮熟・灰汁出し

 ③塵取

 ④ 叩解

 ⑤紙出し・水洗い

 ⑥ 練り

 ⑦抄紙

 ⑧圧搾(脱水)

 ⑨乾燥


道具・簾づくり

途絶えかかっていた“木灰による生漉奉書の作り方”を次の世代に伝える

桂離宮の茶室「松琴亭」の本藍染めの生漉奉書

ボストン美術館所蔵の北斎の版木から摺り直す

北斎が生前使用した同じ生漉奉書の製作を引き受ける

終わりに

-白いだけの紙でも見られるなあ…と言われるような紙を作りたい-


Q&A

越前和紙が現代に生きる道を開拓していけないものか

越前和紙の素晴らしさは、誰にでも一瞬にして分るものか

産地ごとの紙の違いはすぐに見分けられるか

よそが頑張ってるところに手を突っ込むな

その鑑識眼は、どうして身についたか

後継者育成のための人を入れられない

230回以上の重ね摺りに耐え、柔らかさと絵の具を吸う力を失わない生漉奉書

越前奉書の命は越前の水

東山魁夷先生木版画四方山話

生漉奉書は和紙の中でも最高峰?

ガンピ紙製作者と産地

ガンピ紙の値段

仮名文字用書道用紙、高級襖紙などに使われるガンピ紙


第2章

岩野平三郎氏

大判越前麻紙伝統技術の継承と工夫

(株)岩野平三郎製紙所 社主 三代 岩野平三郎氏
2012年7月6日


岩野平三郎製紙所の沿革

平安時代からの技術の継承から始った初代の創業


初代平三郎の偉業

世界最古の紙「麻紙」の復元、独自技術による日本画用紙の創出

-日本画の革命・それまで絹に描かれていた日本画が和紙に変る-

横山大観の壁画用紙 5・4m四方の世界最大の紙を漉く

放火で消失した法隆寺金堂壁画復元の紙を漉く


忘れられない私の思い出

法隆寺飛天の間の大襖2.1m×2.7mの紙を漉く

桂離宮昭和の大修理の紙関係の総責任者を担当

唐招提寺の東山魁夷・法然院の堂本印象・二条城の全襖絵の紙を漉く

平山郁夫の薬師寺玄奘三蔵院の大壁画2.7m×3.8mの紙を漉く

千住博の羽田空港第2ターミナルビルの2.1m×2.7mの紙を漉く


Q&A

採算という問題はどうなっているか

東欧との紙を通した文化交流

襖の売上低下が招く越前和紙の不振

寝かして、涸らして使った方が味が出る

越前から全国に広がった可能性がある和紙の紙漉き技術

中国・韓国の紙漉き技術の現状

薬師寺再建時に建てられた大紙漉きの工場は、今どうなってるか

建築空間デザイナー堀木エリ子氏と岩野平三郎

紙幣印刷と越前

何故、2人、4人の漉き手の息があんなに合うのか

昔唄われていた紙漉き唄は今どうなってるか

絶対絶やしてはならないという覚悟で取り組んでいる、紙漉きの技術

失ってはならない大切なもの


大判麻紙漉き現場の見学

2.1m×2.7mの麻紙漉き現場

紙漉きで一番難しいのは厚さ

簀の上に柿渋で固めた麻布・紗と、三重構造の大紙漉きの簀桁

大判麻紙漉き

イチョウの板に漉き上がった紙を張る

ドウサ引きが必要な日本画用紙

日本画を取り巻く最近の変化

明るい光では分り難い抄紙時の紙の厚み

紙によって漉き方が変る

冬は手が冷たくなって…

コウゾを晒す

平安時代から続く打雲紙の技術


第3章

小川三夫氏

次の世代に伝えたい、西岡棟梁から受け継いだ魂と技

(株)鵤工舎 舎主 小川三夫氏 2004年5月11日


西岡棟梁と私

西岡常一棟梁との出会い

仏壇造りの徒弟奉公から文化財の図面書きへ

西岡棟梁から弟子入りを許される

 厳しい徒弟生活

 怖かった西岡棟梁

 西岡棟梁の人間像

 宮大工の系譜

西岡常一棟梁と薬師寺金堂前(1980年)

 古代工人の魂と精神を受け継いだ最後の宮大工棟梁


樹木四方山話

檜の寿命

植林と自然林

法隆寺建立に使用した檜

自前で文化財建築の修復用材を賄えないで何が文化国家か

肥沃なところに樹齢千年の樹は育たない

東大寺大仏殿元禄の修復時、霧島から運ばれた大屋根の支え“松のアテ材”

宮大工と屋大工


槍鉋をかける 於:鵤工舎(1998年)
道具考

道具の機械化と功罪

自分の体に合わせて作っていた道具

斧の刃に刻まれている三本と四本の線の意味

昔の工人にあった道具の迫力

槍鉋

室町時代に大きく発達した道具とその影響

“執念でのものづくり”が難しくなった時代


伝統の継承

重要な手と体の記憶

時代を超えて伝わる“精一杯の仕事”

勘を磨く修行

平らに見える削り、寸法で平らな削り


飛鳥・天平・白鳳時代の工夫と美意識

西岡家の家訓 法隆寺の棟梁に代々伝えられてきた口伝

伽藍造営には 四神相応の地を選べ

堂塔の建立には 木を買わず山を買え

木は生育の方位のままに使え

木組みは寸法で組まず 木の癖を組め

木の癖組みは工人の心組み

百工あれば百念あり 一つに統ぶるが匠長が裁量也

百論一つに統ぶるの器量なきは 謹みて匠長の座を去れ


不揃いの総持ち

Q&A

強い不揃いの人間集団

入ってきて一年間は掃除と飯炊き

執念ある子はどのようにして生まれるか

寝起きを共にして一つの目的に取り組むと、人間が育ち、自発性も生まれる

独立は完成の一歩手前、未完の内にさせる

寺社の新築で力をつけてこそ、文化財の修理は出来る

森をつくろう


まとめ 

放送大学名誉教授 森谷正規


噛み締めなければならぬ小川棟梁の話と古代工人の精神と魂

和紙 その伝統と革新

 革新、無心の文化貢献

 現代の技術から失われかけている感覚

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